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ハーフマニア
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海外で受賞・配給された作品・人

世界4大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン、モスクワ)、米アカデミー賞で受賞した作品/人など。
作品に関しては監督名、個人賞に関しては個人名。西暦は受賞年。
パート2はこちらへ
『地獄門』1954
衣笠貞之助監督 京マチ子主演。
カンヌ映画祭グランプリ/アカデミー賞特別賞(外国語映画賞)

『地獄門』1954
和田三造
 
アカデミー賞衣裳デザイン賞(実際の仕事は「色彩指導」というもので衣裳だけではなくセットやカメラワークや現像処理までも含むトータルなものだった)和田は日本人初のアカデミー賞受賞者。映画では溝口健二の『新平家物語』なども手がけている。日本を代表する洋画家であり、日本色彩研究所の創設者で、写真・印刷・環境デザインなどの分野でも活躍した。「大船観音」の設計にも関わっている。
地獄門『小さい逃亡者』1967
衣笠貞之助監督 
モスクワ映画祭児童映画部門金賞

日ソ合作第一回作品で大映が製作にあたり、京マチ子や宇津井健らが出演している。シナリオにはソビエト側からエミール・ブラギンスキー、日本側からは黒澤組の小国英雄、カメラマンは宮川一夫という一流どころが当たり、監督にはソビエト側はエドワールド・ボチャロフが当たった。衣笠は戦前『十字路』1928という傑作を作っており、彼はこのフィルムを持って2年に渡りソ連・ドイツで暮らした。なお『十字路』はヨーロッパ中で公開され高い評価を受けている。
わが映画の青春―日本映画史の一側面 (1977年) (中公新書)
『無法松の一生』1958
稲垣浩監督 
ベネチア映画祭金獅子賞

三船敏郎主演。戦前阪東妻三郎主演で作った同映画(これも大傑作)のセルフリメイク。戦前の作品は検閲のためカットされた部分もあり、また撮影・合成技法上できなかったことがこちらでは思う存分やれた。
『宮本武蔵』1955
稲垣浩監督 
アカデミー賞特別賞(最優秀外国映画)

三船敏郎 (武蔵)&三國連太郎(沢庵)の武蔵シリーズ第一作。原作は吉川英治だが、稲垣らが大きく脚色している。二作目以降登場する佐々木小次郎役は鶴田浩二
『白夫人の妖恋』1956
豊田四郎監督 
ベルリン映画祭色彩撮影特別賞

池部良、山口淑子主演。特技監督・円谷英二、撮影・三浦光雄。当時まだ日本では扱える人が少なかったイーストマンカラーを使った作品で、いろいろ試行錯誤の苦労の末の受賞であった。ビデオソフトが出ていないのは文化的損失ですね→
『からみ合い』1962
小林正樹監督
英国アカデミー賞国連平和賞

南条範夫の同名推理小説の映画化作品で『人間の条件』と同じく稲垣公一と小林正樹がそれぞれ脚色、監督を担当、撮影は『砂の器』などの名カメラマン川又昂。山村聰仲代達矢岸恵子らが出演する社会派サスペンス。音楽は武満徹
からみ合い [VHS]
これもDVD未発売。
サントラの一部は『オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽 』で聴ける。
『切腹』1963
小林正樹監督 
カンヌ映画祭審査員特別賞

仲代達矢が主演。井伊家上屋敷に突然「腹のためにお庭拝借…」とやって来た浪人役。この後ゾクゾクするほど物語が意外な方向に展開する。もちろん小林のこと、封建制の矛盾や武士(支配層)の面子・体裁がいかにバカらしいかを説いていく。三國丹波哲郎、岩下志麻らが共演。音楽はこちらも武満徹


 『切腹』
切腹『人間の條件』1960
小林正樹監督
ベネチア映画祭サンジョルジュ賞、イタリア批評家賞

これぞ大作!俳優陣の名演もさることながら、重厚で深遠なテーマといい、もはやこれを越える映画は日本では作られないのではないだろうか。

 『人間の条件』
人間の條件DVD-BOX
『怪談』1965
小林正樹監督
カンヌ映画祭審査員特別賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

出演者は三國連太郎丹波哲郎仲代達矢岸恵子ら国際派俳優の他、志村喬、杉村春子、新珠三千代ら実力者ばかりのオールスター。撮影、美術、脚本すべてが超一流のホラー。もっと世界で評価されて欲しい一作。もちろん原作は小泉八雲

 『怪談』
怪談『上意討ち 拝領妻始末』1967
小林正樹監督
ベネチア映画祭国際映画批評家連盟賞

 『上意討ち 拝領妻始末』

小林正樹の骨太の社会派ドラマ、鋭い人間観察と的確な歴史観に基づいた重厚な演出力。それは日本映画史上屈指の監督だった。歴史劇、時代劇、ホラーなど、どんなジャンルでも傑作ぞろい。
『黄色いからす』1958
五所平之助監督
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞

五所平之助は日本最初の国産トーキー映画『マダムと女房』の監督。 この作品は淡島千景、久我美子、伊藤雄之助、田中絹代などを配したホームドラマ。
黄色いからす 『煙突の見える場所』1953
五所平之助監督 
ベルリン国際平和賞

東京・北千住のお化け煙突を背景にした市民劇の秀作。
『砂の女』1964
勅使河原宏監督
カンヌ映画祭審査員特別賞
アカデミー賞監督賞、外国語映画賞ノミネート

監督の親友だった安部公房原作。砂の美しさ、脅威、不条理な世界を映像で描き切った。原作を超えたひとつの例だろう。モノクロームの映像がこんなに美しいとは。
勅使河原宏は世界的な生け花の流派・草月流の家元でもあり、絵画、陶芸、書をはじめ芸術全般に傑出した人だった。

 『砂の女』
砂の女 特別版 『利休』1989
勅使河原宏監督 
モントリオール映画祭最優秀芸術貢献賞、ベルリン映画祭フォーラム連盟賞受賞。

衣装デザインはワダエミ。日本の芸術・文化を知り尽くした監督ならではの仕事である。三國連太郎主演。野上彌生子原作、赤瀬川原平が共同脚本。コエリョ役で評論家のドナルド・リチーが出演している。
利休
『西鶴一代女』1952
溝口健二監督 
ベネチア映画祭国際賞、英国BBC「21世紀に残したい映画100本」に選出

全世界の映画人が驚嘆した名画。田中絹代、三船敏郎主演。
 『西鶴一代女』
『山椒大夫』1954
溝口健二監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞

おなじみ森鴎外原作の『安寿と厨子王』の幼い姉弟が人買いに浚われてしまう話であるが、溝口は独特の美意識で映画化。八尋不二、依田義賢による名脚本、名手宮川一夫の撮影、田中絹代をはじめとする演技陣など、日本映画界において最高峰に近いキャスト・スタッフが揃った作品。
山椒大夫
『雨月物語』1953
溝口健二監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞

日本映画が達した芸術的頂点。これらを観なけりゃ日本人じゃない!
ゴダールに好きな映画監督を3人挙げてと聞いたら「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答えた話は有名。京マチ子主演。

 『雨月物語』
『雨月物語』1955
甲斐庄楠音(かいのしょうただおと) 
アカデミー賞白黒衣裳デザイン賞ノミネート

甲斐庄楠音は大正期に活躍した美人画の日本画家。昭和15年、溝口健二と知り合い、映画の時代風俗考証家として活動を始めた。『雨月物語』でも衣装デザイン他、舞台となった時代風俗の監修も行っている。内田吐夢監督の『大菩薩峠』(1957)などにも参加した。
ある映画監督の生涯

溝口健二について関係者が語るドキュメンタリー。田中絹代、入江たか子など貴重なインタビューが満載。新藤兼人監督作品。
『裸の島』1961
新藤兼人監督

モスクワ映画祭グランプリ
孤島での過酷な生活。台詞が一切無く、出演も殿山泰司と乙羽信子ほぼ2人だけという異色作。だが感動もの!監督は「台詞がどれくらい重要か、また台詞がどれだけたくさん映像を殺したか」を熟知した名脚本家でもあるが、「映画はすべて絵であることを主張」をあえて実験したものだという。英国アカデミー賞作品賞ノミネートも。

 『裸の島』
裸の島 『裸の島』
林光
モスクワ映画祭ソ連作曲家同盟賞

新藤監督の『映画つくりの実際(岩波ジュニア新書)』にはこの映画の苦労話が載っている。主演の殿山と乙羽が水がたっぷり入った天秤棒をかついで歩くのに一週間かけて練習したそうだ。簡単そうに見えるが、初めての人は立つのもやっとの重さ。最初はフラフラで、地元の人たちは笑ったそうだが、何日も続けて肩の皮がむけてもひたすら練習をくりかえす役者に次第に恐れの目をむけてきたそうだ。
『裸の十九才』1971
新藤兼人監督
モスクワ映画祭金メダル賞

19歳で4人を殺した連続ピストル殺人犯、永山則夫(獄中で作家になり、後に死刑になった)の生い立ちから犯行を描いた作品。現在明大演劇科などの講師を務める原田大二郎の代表作。
裸の十九才 『生きたい』1999
新藤兼人監督
モスクワ映画祭グランプリ!

2度めの快挙。新藤監督はモスクワと相性抜群!
新藤兼人監督は文化勲章を受賞。
生きたい

三國連太郎、大竹しのぶの演技は至高といえます。
『ふくろう』2003
新藤兼人監督
モスクワ映画祭特別功労賞
最優秀女優賞=大竹しのぶが受賞。新藤兼人はこの時御年91歳!監督・原作・脚本・美術を手がけている。東北の山奥の寒村で母娘が繰り返した奇妙な連続殺人をコミカルに描く異色作。

『雨あがる』1999
小泉堯史監督
ベネチア映画祭緑の獅子賞

緑の獅子は平和を描く映画などに贈られる特別な賞。『雨あがる』は黒澤明が脚本(原作は山本周五郎)を書き、自ら監督する予定の作品だったが、叶わず死去したため、愛弟子だった小泉堯史をはじめ、クロサワ所縁のスタッフ、俳優が集って製作した作品。クロサワに敬意を称してベネチアが特別招待した。

『純愛物語』1958
今井正監督 
ベルリン映画祭監督賞

戦後の荒廃の中、原爆で病に冒され死んで行った少女の純愛と孤児たちの非情な現実を描く社会派ドラマ。
『武士道残酷物語』1963
今井正監督 
ベルリン映画祭金熊賞

脚本は溝口監督の懐刀・依田義賢で、現代からさかのぼって何代にもわたる武士の悲哀と残酷な歴史を綴った大作。忠義の切腹、追い腹、上司への実の娘の献上、男色などドロドロの世界。萬屋錦之介(当時・中村錦之助)が何役も演じた。
武士道残酷物語
『橋のない川・第一部』1969
今井正監督 
モスクワ映画祭ソ連映画人同盟賞

被差別部落に生きる人々の苦闘の歴史を正面から描いた住井すゑの原作を今井監督が映画化した意欲作。今井監督ももっともっと国内外で評価されるべき人。
橋のない川 第一部『真昼の暗黒』1956
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭世界の進歩に最も貢献した映画賞
『戦争と青春』1991 モントリオール世界映画祭エキュメニカル賞などの受賞記録も。
今井正監督は代表作『青い山脈』、『また逢う日まで』の他、、『米』、『キクとイサム』など貧しく、虐げられた人々を描いた映画が多いが、デ=シーカと並ぶ世界の映画人だと思う。
今井正の映画人生
今井正「全仕事」―スクリーンのある人生
『裸の太陽』 1959
家城巳代治監督 仲代達矢出演。
ベルリン映画祭青少年向き映画賞

家城は『激流』以降、『悲しき口笛』、『雲ながるる果てに』、『ともしび』、『路傍の石』など数々の名作で知られ、特に子役を使って「家族の絆」を描かせたら天下一品の監督だった。
エンドマークはつけないで―映画監督の夫と共に 『異母兄弟』1957
家城巳代治監督 
チェコスロバキア映画祭グランプリ。

三國連太郎、田中絹代主演。二人の演技合戦は日本映画史上に残る壮絶さ。三國は役作りのため上下10本の歯を抜いてしまった。
異母兄弟
黒澤明監督

1990年第62回アカデミー賞特別名誉賞(アカデミー賞最高の栄誉)を受賞。

授賞式会場ではハリウッドの監督・俳優陣がスターティング・オベーションで祝福した。受賞の弁で80才の黒澤が「私はまだ映画が分かっていない」と述べた時、爆笑が起こった。大巨匠のユーモアだと思ったからだ。ところが当の本人はごく真剣で「だからもっと映画を作るのだ」と結び、その熱意とバイタリティーに万雷の拍手が贈られた。ユーゴ、フランスなど世界各国からの勲章、受賞は多数。日本・アメリカだけでなく、ロシアを含むヨーロッパ諸国からも絶賛・尊敬されている監督は本当に希有だと思う。

1985年・第58回のアカデミー授賞式では何とビリー・ワイルダー、ジョン・ヒューストンと3人で作品賞のプレゼンテイターを務めた。作品賞をもらったシドニー・ポラック監督は「受賞そのものより敬愛するクロサワに自分の作品(『愛と哀しみの果て』)を呼んでもらったことの方がうれしかった」とコメントしている。

黒澤は日本では文化功労者、文化勲章、国民栄誉賞を受賞している。

蝦蟇の油―自伝のようなもの (同時代ライブラリー)

『生きる』 1953
黒澤明監督 
ベルリン映画祭銀熊賞

 『生きる』

『隠し砦の三悪人』1959
黒澤明監督
ベルリン映画祭銀熊賞

 『隠し砦の三悪人』

『羅生門』1951
黒澤明監督 三船敏郎京マチ子主演。
アカデミー賞特別賞(最優秀外国映画)、同賞白黒美術監督賞ノミネート・セット賞ノミネート、ベネチア金獅子賞(グランプリ)

ベネチアへは日本駐在のイタリア映画輸入配給会社のジュリアーナ・ストラミジョリ女史がこの作品を気に入り、自費で英語字幕を付けて出品したそうだ。受賞当時日本人関係者は誰一人出席していなかった。主催者は仕方がないので町で「日本人に似た人」を探し、授賞式の壇上に上げた。その人は何とベトナム人だったそうだ!この映画が完成した時大映の永田社長は「こんな訳の分らん映画を作りやがって」と激怒し製作した重役たちを左遷までしたそうだが、受賞の知らせを受けると一転して製作したのは自分だと胸を張ったそうだ(黒澤の自伝『蝦蟇の油』より)。ともあれ『羅生門』の受賞が、戦後日本映画が自信を取り戻す大きな励みとなった。永田社長はその後海外の映画祭に積極的に出品し、多くの賞を得た。
その後、『羅生門』は1982年ベネチアの50周年を記念して過去のグランプリの中から最高の作品として「獅子の中の獅子」賞を受賞した。
原作は芥川竜之介の『薮の中』だが、同じ芥川の『羅生門』のイメージを見事に融合させている(共同脚本は橋本忍)。この映画が世界に与えた影響はかなり大きい。西部劇に翻案した映画としてシドニー・ルメット監督は1960年にTVムービー『RASHOMON』を、同じ脚本家(マイケル&フェイ・カニン夫妻)でマ−チン・リット監督は1964年に『 暴行 』を作っている。1991年には『薮の中』を原作にした日米合作『 アイアン・メイズ 』、日本映画では佐藤寿保監督『薮の中』1996、三枝健起監督『MISTY』1997がある。

 『羅生門』

『七人の侍』1955
黒澤明監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞
松山祟 アカデミー賞白黒美術賞ノミネート
江崎孝坪 衣裳デザイン(白黒)賞ノミネート

僕にとっては今なおオールタイムベスト1映画。『ラスト・サムライ』の監督は30回見たそうだが、僕はまだ残念ながら21回(2015年9月現在)。だが見るたびに「感心させられる発見」がある。

 『七人の侍』

『影武者』1980
黒澤明監督 
カンヌ映画祭グランプリ
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
村木与四郎 同美術賞ノミネート

 『影武者』

『デルスウザーラ』1975
黒澤明監督
モスクワ映画祭金賞・アカデミー賞外国語映画賞(製作者:松江陽一&ジョルジ・ダネール)

『デルスウザーラ』はれっきとしたソ連映画である。冷戦当時ハリウッドからもソ連からも監督要請があった映画監督はクロサワ以外いないのでは?

 『デルスウザーラ』

『どですかでん』1971
黒澤明監督
モスクワ映画祭全ソ映画労働者同盟特別賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

この映画、黒澤作品の中ではあまり評価が高くないようだが、僕はわりと好きでよく見る。心温まる話とどうにもやりきれない話がごっちゃとなった山本周五郎の原作『季節のない街』(これはこれで大傑作なのだが)を映画向きに非常に優れた脚色がされており、また、どの俳優・女優陣の演技も絶品で、表情、マイム、間合いなど、役者を目指す人にはいいお手本になる。特に圧巻は芥川比呂志と伴淳三郎。

 『どですかでん』

『赤ひげ』1965
黒澤明監督
モスクワ映画祭ソ連映画人同盟賞・ベネチア映画祭サン・ジョルジュ賞、ベネチア市長賞、国際カトリック映画事務局賞

三船敏郎 ベネチア映画祭主演男優賞

 『赤ひげ』

『用心棒』1961
三船敏郎
ベネチア映画祭主演男優賞
村木与四郎 アカデミー賞衣裳デザイン賞(白黒)賞ノミネート。

『用心棒』はイタリアで『荒野の用心棒』、ハリウッドで『ラストマン・スタンディング』にリメイクされた。

 『用心棒』

『乱』1986
黒澤明監督
アカデミー賞監督賞ノミネート
斎藤孝雄、上田正治、中井朝一 同撮影賞ノミネート
村木与四郎、村木忍 美術賞ノミネート

 『乱』

ワダエミ 
アカデミー賞衣裳デザイン賞受賞。


『乱』では何と1,400点にのぼる衣裳デザインを手がけたそうだ。ワダエミはTV『エディプス王』ではエミー賞も受賞している。
若い頃画家を目指していた黒澤は、グリコのシンボルデザイン公募に応募したが残念ながら次点であった。(採用されたのはランナーが万歳しているあれらしい)。もし彼が優勝して採用されていたら今僕らが目にするグリコのデザインはクロサワのものだったかも。だが映画監督クロサワも無く、数々の傑作も無かったかも…。
晩年の映画は、彼がイメージを伝えるために「絵コンテ」といわれる絵を数多く残した。確かにその「表現力」は卓越していた。その絵の権利上の管理は現在あのホリプロが行っている。

『千羽鶴』 1959
吉村公三郎監督 
モスクワ映画祭ソ連平和擁護委員会賞

原作:川端康成 脚本:新藤兼人 撮影:宮川一夫 音楽:伊福部昭という布陣の傑作。
『その夜は忘れない』1963
吉村公三郎監督 
モスクワ映画祭ソ連平和擁護委員会賞

広島に原爆被害の取材に訪れた新聞記者(田宮二郎)と被爆し心身共に蝕まれていたバーのマダム(若尾文子)との出会いと恋を描く社会派メロドラマ。音楽は團伊玖磨
『源氏物語』 1952
杉山公平 
カンヌ映画祭撮影賞

大映の創立十周年記念作で、谷崎潤一郎が監修に当たり、新藤兼人が脚本、吉村公三郎監督、長谷川一夫、京マチ子主演の他、オールスターキャストの超大作。
源氏物語 吉村公三郎監督は『暖流』、『安城家の舞踏会』、『偽れる盛装』など、女性を主人公に映画を撮らせたら世界でも5本の指に入る監督だろう。
『古都』 1964
中村登監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

京都を舞台に、別々に生きて来た双子の姉妹の偶然の出会い、愛、親と子のつながりを描く。岩下志麻が二役を演じた。音楽は武満徹
古都

↑最も美しい頃の岩下志麻!原作は川端康成
『智恵子抄』 1967
中村登監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

高村光太郎の有名な詩集『智恵子抄』と佐藤春夫の『小説智恵子抄』を原作として脚色された作品。丹波哲郎が高村光太郎役、智恵子が岩下志麻。光太郎の親友・椿役に岡田英次。残念ながらビデオ化されていない。この映画の岩下志麻も、もの凄くきれいなのだが…。
『いつか来た道』1959
島耕二監督 
モスクワ映画祭審査員賞

ウィーン少年合唱団の二度目の来日を記念して製作された音楽映画で山本富士子が主演。バイオリニストを目指す視覚障害者の弟を持つ女性とウィーン少年合唱団との暖かな交流を描く。島監督は元二枚目俳優。『次郎物語』『風の又三郎』『細雪』のような名作の映画化、アイドル映画から珍作『宇宙人東京に現わる』までこなした名手。
『白い巨塔』 1967
山本薩夫監督 
モスクワ映画祭銀メダル賞

山崎豊子原作の医学界を舞台にした社会派ドラマで、大ヒット。キネ旬一位など日本映画の賞も総なめした。主演の田宮二郎、小沢栄太郎、加藤嘉は同じ役でテレビドラマにも出演した。監督・山本薩夫ももっと世界で評価されるべき監督だ。
白い巨塔 劇場版
『非行少女』 1963
浦山桐郎監督
モスクワ映画祭金メダル賞

浦山監督は寡作で知られたがどの作品も完成度は高い。浦山は「女優育ての名手」。この作品で和泉雅子が一躍スターになり、国内ではエランドール新人賞を受賞。モスクワ映画祭では審査員を務めた名優ジャン・ギャバンも「この子はすごい」と語ったという。浦山の作品に取組む姿勢と激烈な性格と波乱の人生は田山力哉の『小説 浦山桐郎―夏草の道』に詳しい。
非行少女 『子供の眼』1956
川頭義郎監督
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞

川頭義郎は下記木下恵介の弟子。佐多稲子原作、松山善三が脚色。高峰秀子と高峰三枝子が主演。笠智衆が共演。妻に先立たれた兄(芥川比呂志)と、その子の世話をする妹(高峰秀子)、そして後妻(高峰三枝子)となった女歯科医。子の視線から家族の姿を描く。
これもビデオソフト化されていない。
『永遠の人』 1961
木下恵介監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

阿蘇を舞台に激動の昭和に生きた人々のおよそ30年に渡る愛憎を描く。主演は仲代達矢、高峰秀子、共演は佐田啓二、加藤嘉、乙羽信子ら。まだ高校生だった田村正和の本格デビュー作でもある。
『二十四の瞳』1955
ゴールデングローブ賞外国語映画賞

木下恵介監督作。戦争後に生き残った先生、生徒皆が集まった同窓会、目を失った磯吉が卒業写真を指でたどるシーンは泣けて泣けてたまらない。

 『二十四の瞳』
『太陽とバラ』1955
木下恵介監督
ゴールデングローブ賞外国語映画賞

主演は中村賀津雄、沢村貞子、久我美子、三宅邦子ら。生まれ育った環境ゆえに不良になっていく青年を、社会的な視線で描く。同じ頃流行した『太陽の季節』以来太陽族を神聖化する若者たちに対する批判的な姿勢が明確に示されている作品。
木下恵介監督も日本では大巨匠だが意外に海外での評判はそれほど高くない。もっと世界に向けて作品をアピールすべき。欧米でも通じる傑作が山ほどある。
『陸軍』、『破れ太鼓』、『日本の悲劇』、『カルメン故郷に帰る』、『野菊の如き君なりき』、『楢山節考』などは日本人としても必ず観ておきたい作品。
『天地創造』 1966
黛敏郎 
アカデミー賞作曲賞ノミネート。

ユダヤ人社会のハリウッドが旧約聖書を題材にしたこの映画にユダヤ人作曲家(バーナード・ハーマンとかエルマー・バーンスタイン)とかいくらでもいるのに日本人を選んだのはよほど黛の実力を買ったからに違いない。

 『天地創造』
『トラ!トラ!トラ!』 1970
佐藤昌道、姫田真左久、古谷伸(チャールズ・F・ウィーラー) アカデミー賞撮影賞ノミネート
村木与四郎、川島泰造(アメリカ人スタッフも)同美術賞ノミネート
井上親弥(アメリカ人スタッフも)同編集賞ノミネート。

 『トラ!トラ!トラ!』

この映画の製作にまつわる数々の苦労話は『トラ!トラ!トラ!』の項と右の本をご参照ください。

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

『サンダカン八番娼館 望郷』1975
熊井啓監督
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。
主演の田中絹代はベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞。これが最後の映画出演となった。共演の栗原小巻、高橋洋子も完璧な演技。これを観て泣かない人はもはや鬼だろう。

 『サンダカン八番娼館 望郷』
『海と毒薬』1987
熊井啓監督
ベルリン映画祭銀熊賞

遠藤周作の原作。戦時中九州大学医学部で行われたアメリカ兵捕虜を使った生体解剖を題材にした作品。リアリズムを追求した作品で、スタッフの献血によって本物の血が使われた(白黒映画なのにねえ)。奥田瑛二のベストアクトであり、渡辺謙の出世作。
海と毒薬 デラックス版

『千利休 本覺坊遺文』1989
熊井啓監督
ベネチア映画祭銀獅子賞

勅使河原宏監督の『利休』とほぼ同時期に作られた。井上靖原作で利休役は三船敏郎奥田瑛二、萬屋錦之介、芦田伸介、東野英治郎ら名優が総出演したミステリー仕立ての時代劇。
千利休 本覚坊遺文 『日本の黒い夏-冤罪』2001
熊井啓監督 
ベルリン映画祭特別功労賞(ベルリナーレ・カメラ賞)
熊井監督は2007年5月23日死去。この人のように「日本の闇」に目を向ける監督ももういなくなってしまった。いや、製作者側も観客もいなくなったということなのだが…。せめて自主映画で熊井監督の精神を受け継ぐ人がもっと出てくることを切に望みます。
『ビルマの竪琴』1956
市川崑監督
ベネチア映画祭サンジョルジュ賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

『埴生の宿』を聞くとこの映画を思い出す。 チャコちゃんのお父さん安井昌二が水島上等兵役、三國連太郎らが出演。市川は80年代に中井貴一、石坂浩二でセルフリメイク(『ビルマの竪琴』)している。

 『ビルマの竪琴』
『鍵』1960
市川崑監督、京マチ子仲代達矢主演。
カンヌ映画祭審査員特別賞ゴールデン・グローブ外国映画賞受賞。

谷崎潤一郎の原作はもちろん日本文学史に残る傑作だが、ほとんどポルノ。映画はさすがに気品があるが。
『東京オリンピック』1965
市川崑監督 
モスクワ映画祭スポーツ連盟賞/カンヌ映画祭青少年向け最優秀映画賞 アベベのシーンなど息を飲むほど美しく描かれている大傑作だ。

 『東京オリンピック』

余談だが、当初これは黒澤明が撮る予定で、黒澤は1960年のローマオリンピックを取材までして精力的に準備をしていた。閉会式ではスピーカ内蔵の気球を多数飛ばし、ベートーベンの『歓喜の歌』を会場に響かせるという壮大な計画があった。しかし組織委員会の予算の10倍以上(見積額5億9000万円!)かかることが分かり、黒澤は降りざるを得なくなった。幻の『クロサワのドキュメンタリー』である。

市川崑監督2000
ベルリン映画祭ベルリナーレ・カメラ賞受賞(特別功労賞)
全くジャンルを問わず作品を水準以上のものにしてしまう。特に優れているのは編集技術で、テレビドラマ、時代劇、CMなどでも活躍した。あの『子猫物語』を編集でちゃんとした「映画」に仕立て直したのは業界では有名な話。90歳を越えてなお活躍した。文化功労者。

 Kon Ichikawa Interview
『愛の亡霊』 1978
大島渚監督
カンヌ映画祭監督賞

『愛のコリーダ』同様、アナトール・ドーマンのプロデュースによる日仏合作映画。藤竜也、田村高廣、吉行和子が主演。こちらは中村糸子の『車屋儀三郎事件』を原作にしたホラーだが、撮影・美術などが素晴らしい。特に人力車の車がひとりでに回るシーンなどゾクゾクさせられた。
大島渚監督は古くから『絞死刑』、『少年』、『東京戦争戦後秘話』、『儀式』、『夏の妹』などカンヌやベネチアに招待され国際的に知られているが、意外に大きな賞はあまり受賞していない。だが、『愛のコリーダ』1976以降は『愛の亡霊』、『戦場のメリークリスマス』、『マックス、モン・アムール』、『御法度』と世界に配給され、世界で評価されている。2001年にはフランス芸術文化勲章(オフィシエ)を受章した。

 Gohatto trailer - Movie by Nagisa Oshima
『近松門左衛門 鑓の権三』1986
篠田正浩監督
ベルリン映画祭銀熊賞

近松門左衛門の世話浄瑠璃『鑓の権三重帷子』を郷ひろみ主演で映画化した作品で、作家の富岡多恵子が脚色。粟津潔の美術、宮川一夫の撮影、武満徹の音楽など超一流のスタッフが参加。篠田の妻岩下志麻も出演しているが、志麻の父岩下清がプロデューサーをしている。
鑓の権三 篠田正浩監督も意外と海外での受賞作が少ない。が、『心中天網島』、『卑弥呼』、『沈黙』(マーティン・スコセッシ監督がリメイク予定)などは高い評価を受けている。残念ながら引退を表明しているが…。
『楢山節考』1983
今村昌平監督
カンヌ映画祭グランプリ

松竹の大先輩にあたる木下恵介の『楢山節考』はわざと芝居風のセット(美術:伊藤熹朔)を組み、音楽は浄瑠璃で幻想的な雰囲気を出していた。今村は現代風に真正面からリアリティに描いていた。どちらも傑作であり、見比べてみると面白い。

 『楢山節考』
『黒い雨』1989
今村昌平監督 
カンヌ映画祭高等技術委員会賞

過酷なまでのリアリティを求めた今村監督だが、この映画では敢えて特殊な技法を試みたシーンがあり(例えばワンカットの中で舞台のような照明を使うシーンなど)とても意外に思ったが、役者たちの名演を含め完成度は非常に高い。アメリカでの評価が低いのはこの映画のテーマのせいだけだと思いたい。

 『黒い雨』
黒い雨 デジタルニューマスター版
『うなぎ』1999
今村昌平監督 
カンヌ映画祭グランプリ

今村監督はカンヌでパルムドールを2回も受賞した(世界でも5人しかいない)。惜しくも2006年死去。ちなみに僕は今村監督の『ええじゃないか』に出演してるのだ!こちらをご覧ください。


『彼女と彼』
『にっぽん昆虫記』
1964
左幸子
ベルリン映画祭女優賞

飢餓海峡』の名演も忘れがたいですね。映画監督羽仁進の元妻だった。2001年死去。
にっぽん昆虫記
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